2012年10月6日土曜日

バス停で迎え バス停で送る

公共交通機関で小原に来るには、名鉄「豊田駅」まで来て、それから2時間に1本しかない<上仁木(カミニギ)行き>の地域バス「おいでんバス」に乗って来るしかない。
そして竹内の家へくるには<寺平口>というバス停で降りるのがいちばん近い。
豊田から1時間15分くらいで着くのだが、この夏遊びに来た学生もそれでやって来た、「旅はどうだった?」と聞いた時…「街の景色からだんだん緑の量が増えていき、この辺まで来ると全部が緑になる、その変化が面白かった…と答えが返って来たのは嬉しかった。
ずいぶんたくさんのバス停で止まったと思うが、それぞれの町の空気を感じ、緑を感じて遠くまでやって来た学生に嬉しくなった。
聞くと大府から3時間以上かけて来たとのこと、「のぞみ」で東京と名古屋を往復できる時間は充分旅に値する。
僕はそうやって家へ来る客人を必ずバス停まで軽トラで迎えに行くことにしている。

長い時間バスに揺られ、緑だらけの小原に着き、次に軽トラの荷台で季節それぞれの景色と空気をまるごと感じてもらう
…春にはサクラやフジの花の下をくぐり、初夏には水を張った棚田にうつる空と雲に迎えられ、秋には黄金色の稲穂のジュータンの横をすり抜けて…5感全てで街で味わうことのない感覚を開いてもらいたいからだ。

僕はといえばバスが来る30分も前にバス停に行き、まだ来るわけもないバスを「今はあそこらへんまで来たかな…」と想像しながらバスの来る道を見ながら「待っている」。
<寺平口>のバス停は下り坂の途中にあり、坂の向こうの空から最初に見えるのはバスの頭からで、それから徐々に姿が現れてくる…来た!来た!という感じが嬉しい。
客人も時間をかけて来るのだから、僕も時間をかけて待つ…それが出会いを楽しくさせてくれると思う。

バスの中をうかがい「いた、いた、ちゃんと乗って来た」と
見つけるのも楽しい、そして「ようこそ小原へ」と旅人を迎えるのも楽しい…。
そして帰りもまたバス停に送り、見送る。
車で家の前まで、そして車で自分の家へ最短のルートで来て帰る、その出会いと別れとはまったく違う「間」のありようがバス停にはある。
先日、奄美から来てくれたヨシ君をバス停に送った時、バスの乗り込む彼に心の中で「良い旅を、良い人生を」と祈った僕がいる。
バス停の別れはまさに「一期一会」の瞬間を感じさせてくれるかのようだ…この次はいつ会えるかわからない…今日は来てくれてありがとう…「元気でね…」とバスが坂の向こうの空に消えて行くのを送る。
ただ、その後はとても淋しいけどね…。


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