2012年11月25日日曜日

山の向こうに待つ人あり…

23日、24日と行われた<軽トラあんどんパレード>は
何度もウルウルと涙が出そうな体験とともに「やって良か
った!」という満足感で満たされた。
企画当初は5〜6台くらい走ってくれるかな?と思ったが、
締め切ったら11台の参加といううれしい結果。
そして当日、軽トラの荷台に載せられた個性的でクオリティ
の高いアンドンに「みんなやるな…本気で遊んでくれた!」と再びうれしくなる。
11台とりどりの遊び心を載せた軽トラが会場に入り、4時
くらいから農道に出発順に並び始め、灯りを点灯し始める。
陽が落ちればすぐに暗くなる秋深い夜の訪れに軽トラはクリアな光りを放ち始めた、会場にはパレードの出発を送り出そうと大勢の人が集まってくれている。


午後5時薄暗くなった会場を村人に送られて、順々に11台の<軽トラ螢>は国道へ滑り出して行く…「さぁ始まった」
今夜のコースは小原の西と北の<字>をまわる…一路パレードは西に国道を下り、時速30キロのゆっくりとした光りの
帯が小原の43ある<字>を紡ぎ結び縫っていく旅を始めた。
小原の夜の闇は暗いというより漆黒だ、車のヘッドライトで
浮かび上がるエリアは狭い、小さな橋を渡る…人影が見える
…「誰かパレードが来るのを待っててくれる」…近づくと
農家のおばぁちゃんが花吹雪で歓迎してくれる…涙が出そう
だ「嬉しい…」
しばらく暗闇を走る…また人影が見える…お年寄り、大人、
子供たち、字中の人がここに集まっているような拍手の大
歓迎の中をパレードは進む。


   
道中の95パーセントは人も民家もない真っ暗な山道、こん
なところをパレードして何になるんだろう…イノシシやタヌキさんに挨拶してまわっているような気にもなる。
でもでも、いくつもの細い峠を上り下りした先にほんの10戸もないだろう集落を抜ける時、なにもない辻で寒い中、
3人だったり4人だったりのおばぁちゃんやおじいちゃんが
待っていてくれて、しわだらけの手で拍手や手を振って迎えてくれる…きっと暗く寒いこの辻でじっとパレードが来るの
を待っててくれたに違いない…「ここまで走って来て良かった、待っててくれてアリガトね…ジーンと心が暖まった」



二日間、午後5時から8時までの3時間小原の隅々まで
光を届けてまわった、ふと中国映画の「山の郵便配達」を
思い出した…「山の向こうで待っててくれる人がいる」
そのことだけで大変な山道を歩いて手紙を配達してまわる
…手紙はその人が孤独ではない誰かとのつながりなんだ…
こうして山道を光りを灯してパレードする軽トラも、小原の
住民としてつながっているいることを届けているように
思えた。

  
きっと街中でこのパレードをしても、お金のかかったネオン
や街頭の明かりの中ではちんけな光りにすぎない軽トラあんどんであることだろうが、真っ暗闇を味方につけたパレード
のなんと暖かくてまぶしい光であることだろう。

待っててくれる人たちの静かな拍手の大きな心に軽トラの
窓を開け「ありがとうね…」と答えながらゆっくり通り過ぎて行く時、すべての人たちから「ありがとうね…」と声が
返ってきたような気がする。

  
暗闇に浮かんだ光を灯した軽トラたちの姿を、子ども達は
「きれい」と心のどこかに想い出として刻んでくれただろ
うし、家からあまり出られないお年寄は「いいもんが見れた
…」と冥土へのいいみやげ話になっただろう…軽トラの窓からヘッドライトに照らされた一人ひとりの顔を見た僕には
そう感じられた。



やって良かった…できれば来年も来るからね…待っててね…
子ども達、おばぁちゃん…来年まで元気でね…


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